歩くことが少ない旅なら、かばんをひざの上に乗せて乗り物にゆられるのも、のんびりできていい。ひざの上のかばんには、必要な物はすべて入っている。
すっかり忘れてしまっていたが、岩手の海沿いから秋田能代まで、ただただ移動したことがあった。岩手のどこからか忘れている。何回かバスを乗り継ぐ。バスの窓から見えるのは、なだらかな小山を登ったと思うと少し開けたところに村があり、下ると村があり、山を抜けると村があり、そんな風景が何度も繰り返される。小さな村だからバスはすぐに村を通り抜けていく。
秋田に入ったあたりから、列車に乗ったのかもしれない。能代に近づくにしたがって緑がうすく明るくなっていったのは、よく覚えている。列車は白神山地の麓を走っていたのだと地図を見て今頃気がつく。